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コロや牛すじのコクが特徴 関西では「煮る」という調理用語はあまり使わずに、ほとんど「炊く」と言っている。そのため、関東煮と書いてカントウニと読まずに、カントウダキになったのではないだろうか? また、昆布だしが主流なのは、北海道から日本海を通って昆布が運ばれたことによる。だしに向く上等な昆布は上方で消費され、長昆布はさらに沖縄へ交易品として運ばれていった。大阪ではコロやさえずりなど、鯨肉も欠かせなかったが、今では高級品になってしまった。ただ、牛すじや鶏肉によるコクは健在だ。 創業150年の老舗 伝統のおでんが味わえる 江戸時代から続く老舗のおでん屋が大阪の道頓堀にある。現存する店では最古の「たこ梅」だ。黒ずんだ木造の建物の前に大きな暖簾や木製の灯籠があり、歴史の重みを感じさせる。たこ梅の創業は弘化元(1844)年というから、すでに150年以上の歴史を持つ。鍋を守るのは5代目の岡田珠江さん。 大阪のおでん屋ならだしは鰹節と昆布を使うと思い込んでいたが、たこ梅では鰹節しか使わない。そこで、江戸後期に江戸で生まれたおでんと大阪のたこ梅に共通点があると感じた僕は、店のルーツを割烹着姿の粋な女将さんに尋ねた。「堺の出島に中国人が来てね、食べるもんがわからへんから、浜に降りて自分らで炊きはった。大きなお鍋でな。自分らが食べられるいろんなもんをグツグツ炊いて、みんなで寄って食べはったわけ。それを日本人が見てて、あれ何だっきゃろと。わからん、あんなん入れて炊いて食べたことないちゅうなもんでっしゃろな。名前からいうても、広東人炊きちゃうかいって。せやから、ウチとこのおでんは、関東のほうから来たからカントウダキじゃないの」 どうやら、堺に来た広東人が大鍋で中国風の煮物を作っていて、それを見た日本人がまねして始めたのがたこ梅のおでんの始まりらしい。「関東煮」ではなく「広東炊き」だという説はなかなか興味深い。鍋の中身は別だったとしても、大鍋で煮込む料理からヒントを得たことは否定できない。 グツグツ煮えて湯気を上げている鍋から、何品か取ってもらった。アルミ製の小皿におでんが盛られ、触ると熱いほどだ。おでんをつつきながら、錫で作られたコップで日本酒をちびりとやるのが、女将さんのお勧め。 たこ梅に行ったらぜひ味わいたいのが「タコ特製」である。タコのぬめりを取ってから、特製のたれでじっくり煮込まれた“甘露煮風”の逸品だ。太い足を斜めに切って串に刺してあり、からしを付けてそのままいただく。それまでに食べたおでんのタコは少し硬くなった物が多かったので、たこ梅のタコの風格ある味に驚いてしまった。タコはもちろん明石産。鳴門の渦潮にもまれて身が締まっていると評判だ。特製のたれは過去に何千匹ものタコを煮込んだ物で、うま味がたっぷり染み込んでいるという。 ふと、東京の「呑喜」(文京区本郷)にあったイイダコやイカの煮物を思い出した。京都の「蛸長」(東山区宮川筋)でも同じようなタコの甘露煮が食べられる。甘露煮風のメニューは、東京・京都・大阪の最も歴史が古いおでん屋で共通していたのだ。 その昔、関東煮という呼び名は、タコを丸ごと煮る料理を指したという。1700年代の文献に「蛸のかんとふ煮」という物が登場している。この時代のおでんまだ田楽で、醤油で煮込まれたおでんが登場するのは幕末といわれているから、おでんよりも先に「かんとふ煮」という料理が存在したのは間違いないだろう。たこ梅のタコを口に運びながら、そんな時代の流れに思いをはせてみた。 ■た古梅(たこうめ)/TEL 06-211-0321/中央区道頓堀1-1-8/17時〜21時、日・第3月休/地下鉄日本橋駅から徒歩3分 大阪で関西煮を出す 孤高のおでん店 関東煮ならぬ“関西煮(かんさいだき)”の看板を出して人気なのが、大阪のキタにある「常夜燈」だ。昭和20(1945)年の創業で、当初は大阪駅近くの露天神社(お初天神)の参道で営業していた。ところで、どうして関西煮なの? 「昔、俳優の森繁さんが来て、これはカントウダキちゃうでって。あの年代の関東煮は、海の家で売っている、色が濃くて、大きな鉄鍋で煮たやつ。もしくは、子どもが1銭2銭握りしめて駄菓子屋のおばちゃんとこに買いに行ったり、おばちゃんが鍋持って夕食のおかずに買ってきたりした、そんなのが関東煮。ほな、カンサイダキにしよか、ちゅうたのが昭和27(1952)年ごろやな」 おでん種のほとんどが自家製で、エビ天・海老芋・玉子・大根・ゴボウ天・袋・焼豆腐・ロールキャベツ・すまき・コンニャクが基本。「袋」はゴボウ・ニンジン・白滝入り。 だし汁は白く濁っていた。店主の話では、昆布と鰹節をベースに鶏がらを足して、隠し味に白味噌を加えるそうだ。おでんは田楽から始まったので、白味噌を入れてみたとか。一口含むと、けっこうさっぱりしておいしかった。ちなみに「関西煮」はこの店でしか味わえない。 ■常夜燈(じょうやとう)/TEL 06-6371-1115/大阪市北区豊崎2-8-14 池永ビル/11時30分〜14時、17時〜22時、日休/地下鉄中津駅から徒歩5分 |
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