四国のおでん

四国の食文化は縦に3分割

 今まで、瀬戸内側と太平洋側に四国の文化を分けて考えていたが、おでんを食べ歩いてみたら、それに疑問を感じてきた。香川や愛媛ではおでんに味噌だれを付けるのに、高知では使わないのだ。
 さらに、同じ香川と愛媛でも瀬戸内側の凹んだ地域に付けだれはなく、スーパーの品揃えも高知と共通している点が多い。また、高知県内でも高知市と中村市では味付けも異なり、中村市は愛媛の文化圏に近い。そのため、ハの字型に縦に3分割したほうが、四国の食文化の特徴がよく理解できる。

高知の市場で見つけた
特製だしのあったかおでん

 高知の市場はにぎやかだ。市場といっても、そのへんのおばちゃんたちが自分の家で採れた野菜や手作りの惣菜などを売っている“朝市”のようなもの。ところが、この「市」の歴史は古く、城下町と近郊農村の交流を目的に、元禄3(1690)年に土佐藩の政策として始められた。
 高知では、月曜を除く毎日、どこかで市が立つ。なかでも規模が大きいのが「日曜市」である。高知城の追手門から東1.3キロの区間に約550軒の店が立ち並ぶのは、まさに圧巻。通路には買い物客がぎっしりで、店のおばちゃんと常連客の世間話も盛んだ。日曜市のおでん
 そのなかに、ただ一軒だけおでんを売っている店がある。
「20歳のころから始めて、今は長老になってしもた」
 そう言って笑うのは、「坂本や」2代目の坂本昌子さん。市場で玉子屋を商っている関係で、初めは玉子を売っていたという。
 おでんは9月から5月まで。黄ザラメ・みりん・濃い口醤油・薄口醤油で味付けしたおでんは、「夏でもやっとくれ」と頼まれるほどの人気。冬の寒い日は、鍋を持って買いにくる人がいたり、明け方に店を開けたらすぐに客が来ることもあるとか。交通規制をしているお巡りさんもつまみにやって来る。
 10年ちょっと前に病気で入院した坂本さんは、そのころから娘夫婦に店のやりくりを任せるようになり、そろそろ隠居してもいいかと思っているそうだ。
「けんど、私、作るが好きやから。寝んでも作りたいほどや。それに、お客さんに、おばちゃん元気って聞かれるとうれしいし、おいしいゆうて喜ばれるのが好きやし」
 母から娘へ代々受け継がれていく日曜市のおでん。娘の川田知世さんは、母の味を出すにはまだ一歩足りないと、毎日のようにおでんを仕込んでいる。

■坂本や(さかもとや)/TEL なし/日曜市の店番号47/6時〜17時ごろ、日曜のみ営業/JR高知駅から徒歩15分

伝統の味と製法を守る
明治40年創業の店

 四国のおでんに欠かせないのが「じゃこ天」と呼ばれる揚げかまぼこ。そのじゃこ天の本場が宇和島で、昔ながらの手作りを守る老舗が「野中かまぼこ」だ。
 じゃこ天に使われる魚は「ハランボ」と呼ばれる体長10センチ程度の小魚で、正式名はホタルジャコ。ジャコ天は「ホタルジャコのテンプラ」かと思ったが、やはり「雑魚のテンプラ」がなまったのではないかと店主は話す。
野中かまぼこ 大きな机の上にハランボが山のように積まれ、1匹ずつ頭を切り落としていく。気の遠くなるような作業だが、てきぱきとした手際は見ていて気持ちいい。機械に入れて内臓を洗い流し、ミンチにしてから石鉢でする。皮が付いたままなので色は黒っぽくなり、小骨がそのままなのでプチっとした歯ごたえがある。
 また、宇和島では「焼き抜き」という方法で作られたかまぼこも特産品だ。かまぼこ板の下からも熱を加えるのが特徴で、最初は板側からガスで焼き、次にすり身側、最後に電熱できつね色に仕上げる。
  野中かまぼこの板付けは伝統を守って、へらを使わずに手作業で行なわれる。すり身が入った鉢から適量をつかみ、それを板に載せて握るように形を整える。2方向から握って、端の余った部分を落とせばできあがり。手の形が残る、素朴な塩味がする逸品である。

■野中かまぼこ店/TEL 0895-25-7711/宇和島市堀端町1-53/7時〜19時、元旦休/JR宇和島駅から徒歩18分

日本でいちばん
おでんを食べている地域!?

うどんとおでん 香川で讃岐うどんの店に入ると、なぜか片隅におでん鍋が置いてある店が多い。おにぎりや稲荷寿司もあるが、おでんはなぜか麺類と相性がいいような気がする。串刺しになっているので、客は勝手に皿に取って、会計時に「かけうどんとおでん○本」という具合に申告すればいい。なかなか合理的なシステムだ。
 讃岐うどんのガイドブックを片手に、おでんが評判の店を訪ね歩いた。そのうちの一軒で、ついにお気に入りのおでんを発見。我ながら変なことをしていると思うが、この「小縣家(おがたや)」(仲多度郡満濃町吉野1298-2、0877-79-2262)は、大根を自分すりおろす「しょうゆうどん」で知られる店である。
 讃岐うどんの店でおでんを出すのが広まったのか、四国全体の食堂にはおでん鍋が置いてある率が高い。夏でも食べられるので、ひょっとしたら、日本一おでんを消費している地域は四国かも?

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