おでん研究家のつれづれ

2005年09月01日 (木)

『女性自身』のおでん特集

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 『とことんおでん紀行』を出版して以来、マスコミからの失礼な問い合わせに、いろいろ考えさせられる。最初の1年ぐらいは、電話で問い合わせがあると親切丁寧に答えていたのだが、僕のことを紹介してくれるわけでもなく、本の紹介もなく、当然、謝礼ももらえない。
 テレビの場合は、番組がいつ放送されるのかの連絡もなく、電話を切ったらサヨウナラということが多かった。僕の本に書いてある情報(例えば韓国のおでんの食べ方)をそのまま利用されることもあり、どこでそれを調べたのか問い合わせたくなった。
 テレビや雑誌の多くが、このように情報をタダで得て、それで番組や誌面を作っているのが現実だ。それでも、制作した人たちはそれでギャラを得て、生活しているわけだ。タダで情報を提供した人には何も残らない。そんなことでいいのだろうか?

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 2002年11月26日に発売された『女性自身』(02/12/10号、光文社)のおでん特集も、同じようなケースだった。タイトルは「決定! 日本全国故郷おでん大賞!」で、全国各地の10種類のおでんレシピをイラスト入りで紹介している。担当ライターは中江香さん、イラストはいばさえみさん、おでんレシピを作ったのはフードコーディネーターで栄養士の羽賀敦子さん。
 今回の件は、最初に僕のところに『女性自身』の編集者と名乗る齋藤さんから電話があった。『とことん亭のおいしいおでん』に掲載しているレシピを10地域紹介したいと言われるが、13地域のうちの10地域ということになると、ほとんど本の内容を出してしまうことになる。
 それだと本の売り上げに影響しそうな気がしたので、もう少し数を減らしてもらうようにお願いしたが、どうしても10地域は載せたいらしい。しかたないので、掲載する場合のギャランティーを聞いて判断したいと伝える。けっきょく、レシピは料理研究家に頼むとつぶやきながら、齋藤さんは電話を切った。企画書などがFAXで届いたわけでもなく、急な電話だったので連絡先もわからず、その後、どうなっているのか心配しながら時が過ぎた。

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 最初の電話から2週間後、担当ライターの中江さんからメールが届く。著書を参考に記事をまとめているとのこと。写真を借りたいことと、借用料を払うこと(金額は不明)を伝えられる。最初のレシピ掲載の懸案事項がそのままだったので、確認したい旨を返信し、併せて取材謝礼はあるのか再度問い合わせる。
 翌日、中江さんから電話。レシピはやっぱり10地域ぐらい載せるらしく、本の情報を元に料理研究家に頼んでいるそうだ。それはちょっと問題があると思うので、再度編集者に確認してもらうことになった。ただし、監修者として監修料を払う意思があるようなので、金額を確認するが、具体的な額については編集者からの連絡待ちとなった。
 そして3日後。編集の齋藤さんから電話。いきなり「今回の話はなかったことにしてほしい」と言われる。監修料や写真使用料についての返事はけっきょくなかった。そのうえ、おでん企画はそのまま進めるつもりで、料理研究家に依頼してあるレシピは活用するそうだ。齋藤氏はこれから各地に電話取材を行なうと言っていたが、料理研究家に依頼した時点での情報源はどういう扱いになるのか疑問に思う。
 その後、担当ライターの中江さんから取材を新たにやり直すというメールが届いた。しかし、全国にどんなおでんがあるのかは僕の本を参考にして、それを裏付けるために各地に電話しただけなのは間違いないだろう。実際に発売された誌面と僕の本を見比べれば、僕の本からアイデアを盗用したと感じてもらえるはずだ。
 掲載されたレシピの分量は本のデータとほぼ同じだし、沖縄の豚足おでんにあばら骨のだしを使うのは、おでん屋「悦ちゃん」のオリジナルである。この情報もどこから得たのか知りたいところだ。

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 さて、今回のケースは著作権侵害に当たるのか、あるいは盗作や盗用になるのだろうか? 著作権情報センターの窓口に相談してみると、アイデアが盗まれた場合は立証が難しいらしく、さらに料理のレシピそのものには著作権はないということがわかった。例えば、雑誌に掲載されたレシピをまねして、レストランがメニューに加えても、法的には何もできないらしい。要するにモラルの問題なのだ。
 ただ、今回の経緯を説明すると、相談員は「大手の出版社がそんなことでいいのか」と同情してくれた。同じ紙媒体なので、どこかで似ている部分があるはずだし、詳しい弁護士に相談したほうがいいだろうという話になった。
 また、雑誌に掲載されたことでアイデアの元になった本の売れ行きが落ちたり、その料理研究家が「おでん研究家」を名のったりすると、不正競争防止法という法律が該当するらしい。
 けっきょく、編集部は謝礼を払いたくなかったと思わざるを得ない。払う意思があったとしても、おそらく社内の規定が特になく、できるだけ安くあげたかったはずだ。今回のケースが著作権侵害に当たらないことも知っていて、最終的にうるさいヤツは切り捨ててしまえという結論になったのだろう。
 弁護士に相談するかどうかは検討中だが、ひとまず、ここで経緯を紹介しておくことにする。テレビ番組や雑誌の特集はこのように作られているという一例を、多くの人に知っていただきたい。(02/11/27)
                ◎

 その後、12月1日に光文社から現金書留が届いた。中には1万円が入っていて、女性自身の「コメント料」という名目になっている。コメントした覚えはないし、何も掲載されていないので、これを受け取ると筋が通らない。すぐに返金する。まったく失礼な話だ。(02/12/03)

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