おでん研究家 新井由己の
静岡おでん食べある記
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丸子の名物は丁子屋のとろろ汁だけじゃない
ばん (静岡市)
 
 丸子にうまいおでん屋があると聞き、さっそく出かけてみた。真っ白な暖簾をくぐって店内に入ると、ステンドグラス風のフィルムが張ってある窓辺におでん鍋がひとつ、お好み焼きの鉄板の奥には、もうひとつのおでん鍋と座敷が見えた。
 店主の伴よし子さんは、「このお店はみんな手作りなんですよ」と話す。店の暖簾や前かけはもちろん、丸太を組み合わせた長椅子も手作りだという。店の雰囲気が明るくて開放的なのは、そんな手作り感にあふれているからかもしれない。
 店を始めたのは昭和52年。ご主人のスイミング仲間がいつも集まり、そのときにおでんを出していたので、「どうせなら」とおでん屋にしてしまったのだ。
 自宅前で店を出し、3年くらいしたら、行列ができるほどになった。結局、もうひとつ部屋をぶち抜いて、店を広げることになる。
しぞーかの家庭で食べられていた味
店内
赤ちゃん連れの家族連れも楽しく過ごせる
店主の伴よし子さん
「もっと儲けなよ」とお客さんから言われるんです
「うちのおでんは、家で作っていたものをそのまま出してるんですよ」
 おいしさの秘密は、ドイツ製の特別な鍋を使い、牛すじを煮込む点にあった。どういう仕組みになっているのかわからないが、アク取りをしなくても自然にアクが取れるらしい。しかも、余分な脂分がラードのように表面に固まるので、コクが足りないときにはこれをおでん鍋に追加する。
「私にとって、おでんは赤ちゃんと同じ。熱を出してないか、お腹をこわしてないか、常に気を遣って、10分おきに見てるんです」
 そのうえ、いつでも全部のおでん種があるようにと、気配りも忘れない。閉店間際に種を追加してご主人に怒られることもあるという。
「だって、食べたい種がなかったらかわいそうじゃない。お芋を1本だけ食べて帰る人がいて、それがうれしいの」
 丸子のおでん屋は、そんな優しさに満ちていた。

飴色に染まった大根
飴色に染まった大根がおいしそう!
好みで味噌だれをかける
お好みで鍋に入っている味噌だれをかける
黒はんぺんは蒲安の手作りはんぺん
おでん種は焼津から仕入れるが、黒はんぺんは「蒲安」の手作りはんぺん
外観
抜け道になっているので、店の前の車には注意